用語集 


■A型黒鉛 (A type graphite)
ISO(→「ISO」)で定め た普通鋳鉄(ねずみ鋳鉄)に於ける黒鉛組織分類の5 形式の一つ。一般に、砂型鋳物に発生する片状の黒鉛 組織で、最も望ましいのは、適度に伸びた片状黒鉛が 無秩序、かつ均一に分布している組織とされている。

■オーステナイト (austenite)
鋼の組織の一つで、炭素 を含有したγ鉄の組織学上の呼び名。3変態点1183K (910℃)〜A4変態点1673K(1400℃)域で安定し ている。一般に常磁性体で、靭性に富んでいるが、炭素含有量が多いほど硬くなる。 (→「変態点」)

■ISO (International Organization for Standardization)
国際標準化機構が発行する国際規格。1946年創設。

■SAE (Society of Automotive Engineers)
アメリカ自動車技術協会の略称。自動車、バス・トラック、宇宙・航空材料、および航空機に関する規格を発行している。

 


■球状黒鉛 (spheroidal graphite)
鋳鉄中に存在する黒鉛形状の一つ。一般的には、球状黒鉛鋳鉄の球状の黒鉛を指し、ISOの分類では、Ⅳ型に相当する。(右図参)

■共晶状黒鉛 (eutictic graphite)
ISOで定めた、普通鋳鉄(ねずみ 鋳鉄)に於ける黒鉛組織分類の5形式のひとつ。共晶セル全体が微細な黒鉛組織になったもので、D型黒鉛とも呼ばれる。 (→「D型黒鉛」)

■黒鉛球状化率 (ratio of graphite spherodization)
球状黒鉛鋳鉄に於ける黒鉛の球状化の程度を表す指標。球状黒鉛鋳鉄では、黒鉛形状が必ずしも理想的な球状になっているわけではない(右図参)。材料の諸性質に影響すること もあり、JISG 5502等で定量的に表す方法が規定されている。
(JISの定義:全黒鉛数に対する形状ⅤとⅣの黒鉛粒数の割合(%))

■黒鉛ダイス (graphite dies)
鋳鉄棒製造用の水平連続鋳造に於いて使用されている 黒鉛の鋳型。所望形状に加工が容易で、熱伝導率が高く、潤滑性を有し、鋳鉄溶湯 との反応が少ない等の利点を有する。

 


■水平連続鋳造
連続鋳造は、スラブやビレット形状の鋳片を、金属溶湯から直接、連続的に製造する方法。水平連続鋳造は、鋳片を水平に引き出せるようにタンデッシュ (→「タンデッシュ」)や鋳型などが水平に配置されており、一般に鋳鉄棒の生産にはこの方式が採用されている。

■ショアー硬さ (Shore hardness)
記号HSで表示される。試験片の測定面上に一定の高さから落下させたハンマーの跳ね上がり高さで示す硬さ。JIS Z 2246に試験方法が規定されている。

■焼準
(→「焼きならし」)

■焼鈍
(→「焼きなまし」)

■セメンタイト (cementite)
鉄の炭化物(Fe3C)。で磁性を有し、非常に硬くて脆い。組織学上の呼び名で、パーライト中の1相を形成している。熱的に不安定な化合物で、1173K(900℃)以上で長時間加熱すると分解して黒鉛に変化する。鋳鉄では、溶湯が急冷されたり、接種が不十分な場合、凝固時にこの組織が晶出して材質を硬くする。チル化とは、この組織が晶出したことを意味する。(→「チル組織」、「白銑化組織」)

 


■体心立方晶 (Body centered cubic crystal)
結晶の格子構造の一つで、立方体の8つの頂点A〜Dとその中心(体心)に原子が配列している結晶構造。同様に、立方体の8つの頂点A〜Dと6つの面の中心(面心)a〜fに原子が配列している結晶構造を面心立方晶(Face centered cubic crystal)と呼ぶ。

■タンディッシュ (tundish)
取鍋から鋳型に注湯する際、溶湯注入流の整流を得るため使用される耐火物内張り容器で、連続鋳造法に於いては必須。水平連続鋳造では、このタンディッシュに鋳型が直接取り付けられており、溶湯を保温する役割も有する。

■D型黒鉛 (D type graphite)
ISOで定めた、普通 鋳鉄における黒鉛組織分類の5形式のひとつ。共晶セル全体が微細な黒鉛組織になったもので、共晶に近い組成で生成し易い。共晶状黒鉛組織、または過冷黒鉛組織と呼ばれる。(右写真参:写真中の黒色部が共晶状黒鉛、白色部はフェライト)

■チル組織 (chill structure)
鋳鉄溶湯が急冷されて生成する、通常とは異なった組織。破面では、チル組織部は白色であり、正常に黒鉛の晶出した黒色部と区別できる。(→「白銑化組織」、「セメンタイト」)

 


■白銑化組織
鋳鉄溶湯の凝固過程で、急冷されて生成する組織。炭素が黒鉛ではなく、セメンタイト(Fe3C)の形で晶出しており、破面が白色を呈することから、白銑化と呼ばれる。黒鉛の晶出を促進させる接種などの操作により、セメンタイトの晶出を抑え、白銑化を防止できる。
(右写真は、くさび型試験片の例:白色部がセメンタイトの晶出した白銑化組織域、黒色部が黒鉛の晶出域。左側試片に比べて、不十分ながら接種を施した右側試片の白色部は減少している)(→「セメンタイト」)

■パーライト (pearlite)
フェライトとセメンタイトが同 時に析出した組織で、顕微鏡的には両者が互いに層状に観察される(右写真参)。斜光線による光学顕微鏡では真珠(パール)のような光沢を呈することに由来。オーステナイト状態から徐冷したときに得られる組織で、
1変態点(約727℃)より高温に再加熱すると元のオーステナイトに変化する。わずかに磁性を有し、鋼の組織中で最も安定している。(A1変態点→「変態点」)

■ビッカース硬さ (Vickers hardness)
記号HVで表示される。正四角錘のダイヤモンド圧子を一定荷重で試料面に押し込み、生じたくぼみの大きさから求めた硬さ。JIS Z 2244に試験方法が規定されている。

■フェライト (ferrite)
Fe−C系において1183K(910℃)以下で存在する、炭素等の元素を含有したα鉄の組織学上の呼び名。語源は、ラテン語の鉄(ferrum)。成分はほぼ純鉄に近く、0.85%以下の鋼には初析フェライトとして存在し、軟らかく、伸展性が大きい。強磁性体であるが保磁力は小さい。

■ブリネル硬さ (Brinell hardness)
記号HBで表示される。鋼球または超硬合金球の圧子を試料面に押し込み、生じたくぼみの面積と試験荷重とから求めた硬さ。JIS Z 2243に試験方法が規定されている。

■変態点 (transformation point)
原子配列や物理的性質が変化する温度のこと。鉄・鋼の変態点は多種あり、一例を下記に示す。
・A0変態点 セメンタイトの磁気変態温度483K(210℃)。セメンタイトは、この温度以下では強磁性体だが、この温度以上では常磁性体となる。
・A1変態点 鋼の共析変態温度999K(726℃)で、冷却時の変態をAr1、加熱時の変態をAc1と呼ぶ。なお、共析変態とは、オーステナイトからフェライトとセメンタイトが同時に析出し、パーライトを形成する変態である。
・A2変態点 鉄の磁気変態温度。純鉄では1040K(770℃)だが、炭素含有量とは 無関係にほぼ一定である。
・A3変態点 α鉄(体心立方晶)⇔γ鉄(面心立方晶)の同素変態を生ずる温度。純鉄では1183K(910℃)だが、炭素含有量の増加と共に変態点は低下する。(体心立方晶、面心立方晶→「体心立方晶」)
・A4変態点 鉄の同素変態の一つで、A4変態点以下ではγ鉄(面心立方晶)、それより高温ではα鉄(体心立方晶)。純鉄では1673K(1400℃)だが、炭素含有量が増加すると変態点は上昇する。
・Acm変態点 鋼のオーステナイトからセメンタイトが析出する変態温度。Fe−C系では738℃〜1153℃の間にあり、炭素含有量が増加すると変態点は上昇する。

■ポアソン比 (Poisson's ratio)
ある物体に変形を与えた時の、長さ方向と横方向のひずみの比。例えば、太さ一様の棒の両端に力を加えて伸ばす(または縮める)と、棒の横方向は逆に縮む(または伸びる)。このとき、長さ方向の単位長さ当たりの伸び(縦ひずみ)をA、横方向の単位長さ当たりの縮み(横ひずみ)をBとすると、ポアソン比σ=B/Aで表される。

 


■焼きなまし (annealing)
合金の軟化、結晶組織の調整、内部応力除去などを目的とした熱処理。鉄・鋼の場合、軟化や内部応力除去には773K(500℃)前後、組織調整にはA3またはAcm変態点より高温にて加熱後、炉冷するのが一般的。(A3変態点、Acm変態点→「変態点」)

■焼きならし (normalizing)
鋼をA3、またはAcm変態点以上に加熱後、空気中で冷却し、結晶組織を標準化するための熱処理。材料全体の基地組織を微細化させたり正常な組織に戻すことで、材質向上や均質化を確保する目的で行われる。(A3変態点、Acm変態点→「変態点」)

■焼戻し炭素(黒鉛) (temper carbon)
白銑鉄をA1変態点以上の温度に焼きなましすると、セメンタイトが分解してアェライトと黒鉛を生ずる。この黒鉛を、普通鋳鉄(ねずみ鋳鉄)の片状黒鉛と区別して焼戻し炭素と呼ぶ。

■ヤング率 (Young's modulus)
引張、または圧縮の場合の弾性係数。

 


■ロックウエル硬さ (Rockwell hardness)
ダイヤモンド圧子または球圧子を用い、初荷重〜試験荷重〜初荷重に戻す操作を行い、前後2回の初荷重に於ける試料面への圧子侵入深さの差から求めた硬さ。記号HRで表示され、HRA(Aスケール)はダイヤモンドの場合、HRB(Bスケール)は球圧子の場合を意味する。JIS Z 2245 に試験方法が規定されている。

■END■
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監修 土田
  古野 好克
  新沼